有機溶剤暴露者の尿中有機溶剤と有機溶剤代謝物濃度の比較

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05670372
• 研究機関: 川崎医療福祉大学
• 研究代表者: 緒方 正名 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 教授 (70032844)
• 研究分担者: 嶋田 義弘 中国短期大学, 生活学科, 助教授 (80196493) ; 藤井 俊子 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 助教授 (70099638) ; 田口 豊郁 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (30197248)
• キーワード: 有機溶剤 / 混合溶剤 / 尿中溶剤濃度 / 代謝産物濃度 / 呼吸域濃度 / β-シクロデキストリン / 空間ガス法 / 生物学的モニタリング

研究概要

有機溶剤取り扱い作業者の尿中に排泄される有機溶剤濃度を測定し、気中濃度との関係及び、同時に排泄される代謝産物との関係を調べた。
尿中に存在する溶剤は、微量であるので、その保存法の検討を行った。そして、満水状態での保存が有効であること、β-シクロデキストリン誘導体を添加し、包接化合物を形成する方法が最も有効であることを認めた。脱水気化法は、収量がよいので、低濃度の試料には適当と推定された。
(1)トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロピルアルコール(IPA)を含む混合溶剤取り扱い作業者の気中溶剤濃度と尿中溶剤濃度の間に有意な相関を認めた。同時にトリエン濃度と尿中馬尿酸濃度、IPA濃度と尿中アセトン濃度の間に有意の相関を認めた。
(2)トルエン、キシレン、メチルエチルケトンを含む混合溶剤取り扱い作業者の気中MEK濃度と尿中MEK濃度の間に有意の相関を認めた。
(3)ジクロルメタン、1、2-ジクロルエタン、トリクロルエチレンを含む混合溶剤取り扱い作業者の気中溶剤濃度と尿中溶剤濃度の間、呼気中濃度と尿中溶剤濃度の間に有意の相関を認めた。また、尿中トリクロルエチレン濃度と三塩化エタノール三塩化酢酸濃度の間にも有意な相関を認めた。
(4)何れの場合においても、気中溶剤濃度と尿中溶剤濃度の間の相関は、尿中のクレアチニン・比重補正濃度より非補正濃度の方が有意の相関を示した。その理由は、溶剤が血中より尿中に拡散する為と考えられる。又、尿中溶剤濃度と代謝産物濃度の相関では、尿中溶剤の非補正濃度と尿中代謝産物のクレアチニン・比重補正濃度の相関が、最も高い相関関係を示した。
(5)尿中濃度より、血中濃度を推定出来るモデリング式の適応を検討中である。

研究成果

• [文献書誌] Ogata,M: "Occuptional exposure to mixture of industrial chemicals" Appl.Occup Environ Hyg.8. 609-617 (1993)
• [文献書誌] Ogata,M: "Japanese experience in biological monitoring" Int.Arch.Occup.Environ Health. 65. 15-21 (1993)
• [文献書誌] 緒方正名: "トルエン,メチルエチルケトン,イソプロピルアルコールの混合蒸気に暴露された作業者の尿中溶剤,代謝物濃度" 川崎医療福祉学会誌. 4. 91-99 (1994)
• [文献書誌] 道辻宏美: "ジクロルメタン,1.2-ジクロルエタントリクロルエチレンの混合溶剤暴露作業者の尿中溶剤,代謝物濃度" 医学と生物学. 129. 321-324 (1994)
• [文献書誌] 緒方正名: "混合有機溶剤暴露者の溶剤代謝産物より暴露の評価法" 医学と生物学. 129. 307-312 (1994)
• [文献書誌] 緒方正名: "生物学的モニタリングの評価とそのバックグラウンドについて" 労働衛生管理. 6. 33-45 (1995)
• [文献書誌] 緒方正名: "最新内科体系(75)環境因子による疾患" 中山書店, 17 (1994)