尿は体内の不用物を排泄するものであるが、同時に、身体状況を反映しているものでもある。従って、尿の抗変異原活性も身体状況を示す一つの指標になりくるものと考えられる。我々は、尿がfurylfuramideのSOS反応誘導性に対して抑制作用(抗変異原作用)を示すこと、尿の抗変異原作用には個人差があることを報告している。本研究の目的は尿の抗変異原作用と生活習慣の関連を調べることにより、個人差に寄与する要因の解明を行うことにあるが、それに先立ち、尿の変異抑制作用をより正確に把握するため、尿の抑制作用の表示法について再検討した。また、抑制作用に影響すると考えられる尿の濃度補正についても検討した。その結果、尿の抗変異原作用には日内変動があるものの、日間変動は小さいこと、尿の抗変異原作用と尿中クレアチニン量の間には弱いながらも正の相関関係のあることが明らかとなった。従って、尿のSOS抑制作用の検討には、採尿時間を限定することが必要なこと、尿の濃度による補正が必要であることが示された。また、尿中クレアチニン量は比較的安定しているため、尿の濃度補正には尿中クレアチニン量との比較が有効でることが示唆された。勤労者のライフスタイルはワークスタイルに大きく影響されているが、日勤、夜勤、深夜勤務など勤務態様にいくつかのタイプのあるタクシードライバーの勤務形態・勤務状態に関する聞き取り調査を行なうと同時に、フリルフラミドのSOS反応誘導性に対する尿の抗変異原作用をネズミチフス菌 TA1535/pSK1002 を用いたumu試験により調べた。勤務状態及び種々の生活習慣と尿の抗変異原作用の関係について解析中である。
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