Rifampicin(RFP)の作用機序は大腸菌の系でRNA polymeraseの阻害であることがわかっていたが、結核菌においても感受性菌と耐性菌の塩基配列の比較より、耐性菌ではRNA polymeraseのcore enzaymeの5つのsubunitのうちbeta-subunitに変異が認められることが判明した。そこでRNA polymeraseのbeta-subunitをコードする領域の遺伝子(rpoB遺伝子)の1363番目から1774番目の領域を増幅できるプライマーをデサインし、PCR法によって結核菌から抽出したDNAの増幅を行ない、その産物をpUC18にクローニングし、ジデオキシターミネイション法により、A.L.F.DNAオートシークエンサーにて塩基配列を決定した。その結果、RPF感受性標準株として青山B株と、臨床分離RFP耐性菌2株について検討を行なったところ、耐性菌2株にはrpoB遺伝子の522Serと526Hisにそれぞれ塩基置換が見られた。この結果ば、わが国における臨床分離結核菌においてもこの領域の塩基置換を見い出すことにより、RFP耐性菌を迅速に遺伝子診断することができる可能性を示唆するものである。 Isoniazid(INH)耐性菌に関しては、INH耐性とカタラーゼの欠損が高率に相関しており、カタラーゼ遺伝子の有無をPCR法により調べることにより耐性菌の判定を行なえるかどうかの実験を行なった。すでにクローニングされ、塩基配列が決定さている結核菌のカタラーゼ遺伝子(2.9Kbp)の一部(240bp)を増幅させるプライマーをデザインし、INH感受性菌、低濃度耐性菌および高濃度耐性菌より抽出したDNAの増幅を行った。その結果、INH高度耐性菌にはカタラーゼ遺伝子の欠損が認められ、INH高濃度耐性とカタラーゼ遺伝子の欠損が相関しており、耐性菌を迅速に検出する可能性を得た。
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