ストレプトマイシン(SM)は30Sのリボソームのサブユニットに作用し蛋白合成を阻害することから、SM感受性結核菌標準株およびSM耐性臨床分離結核菌を用いこの領域の遺伝子解析を行って耐性化のメカニズムの検討を行った。その結果、S12リボソーム蛋白遺伝子(rps遺伝子)の変異または16SrRNAをコードする遺伝子(rrs遺伝子)の変異とSM耐性が相関することが判明した。SM耐性菌に認められた変異としては、S12リボソーム蛋白の43番目または88番目のリジンがアルギニン、グルタミン、メチオニン、スレオニンのいずれかに置換、rrs遺伝子の512番目;C→T、513番目;A→C、513番目;A→T、906番目;A→C、907番目;A→Gの変異、907番目と908番目の間の1塩基の挿入であった。重複して2カ所以上に変異の認められた耐性菌はなかった。 SM感受性株ではrpsL遺伝子の43番目のアミノ酸の部位に制限酵素MboII切断部位をもっているが変異株では失われていることを利用して、rpsL遺伝子をPCR法で増幅後MboIIで消化しアガロース電気泳動法により変異の検出を行った。臨床分離株174株について検討を行ったところ、SM耐性菌96株中30株(31.3%)に変異が認められた。感受性株に変異は検出されなかった。rpsL遺伝子の43番目のアミノ酸の部位に変異の認められないSM耐性菌はrpsL遺伝子およびrrs遺伝子の塩基配列の決定を行って、変異の検出を行った。その結果SM耐性菌29株中20株(69.0%)に変異が認められた。この場合も感受性株に変異は検出されなかった。 以上より、SM耐性菌の70%以上[31.3%+(100%-31.3%)×0.69]がrpsL遺伝子およびrrs遺伝子の変異の検出により耐性の判定を行えることが判明した。
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