結核菌のリファンピシンおよびストレプトマイシン耐性に関与する薬剤耐性遺伝子を分子遺伝学的手法により明らかにし、迅速検出法への応用を試み以下の成績を得た。 1、RFP耐性臨床分離結核菌株47株および感受性臨床分離株17株より抽出したDNAを鋳型としてPCRを行い、411塩基対のRNAポリメラーゼのβサブユニットをコードしている遺伝子過去(rpoB遺伝子)断片を増幅させた。ストレプトアビジン化ダイナビーズを用いた直接塩基配列決定法によりこのDNA断片の塩基配列を決定し、相互に比較検討した結果、RFP耐性株47株中44株(93.6%)に変異が検出され、残りの3株には変異が認められなかった。これに対して、感受性株17株には変異が全く検出されなかった。したがって、rpoB遺伝子の塩基配列を決定し、変異を検出することにより、確実で迅速なRFP耐性菌の検出が可能になると考えられた。 2、SM耐性はS12リボソーム蛋白遺伝子(rpsL遺伝子)の変異または16SrRNAをコードする遺伝子(rrs遺伝子)の変異と相関することが判明したので、臨床分離結核菌株173株を用いてrpsL遺伝子およびrrs遺伝子の変異の検出を試みた。SM耐性菌に認められた変異としては、S12リボソーム蛋白の43番目または88番目のアミノ酸置換、rrs遺伝子の513番目、906番目、907番目の塩基置換、907番目と908番目の間に1塩基の挿入であった。重複して2カ所以上に変異の認められた耐性菌はなかった。シークエンスを行って確認したSM耐性結核菌37株中29株(78.4%)に変異が認められたことから、rpsL遺伝子およびrrs遺伝子の変異を検出することにより迅速診断が行える可能性を得た。
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