ABO式血液型の遺伝子exon部分の構造はHakomoriらの研究グループによって判明したものの、その発現をregulateするpromoter領域やsplicingなどのpost translational controlについての知見は皆無である。ABO式血液型には通常のA_1型、B型、O型、A_1B型の他に様々な変異型があることが知られているが、先に我々が見い出した富山県に高頻度に見られるA_3型は分泌腺におけるA抗原の発現は通常のA_1型と同様で、血清中にも通常のA合成酵素が産生されているのに、赤血球上のA抗原の発現が抑制されている変異型であって、この研究によって絶好の材料である。そこで、本年度は手始めとしてこの変異型における特異な塩基配列の有無を調べることとした。 プローブを用いてPCRを行い、A遺伝子のexonを含むゲノムDNAを増幅し、プラスミド(pT_7T_318U)に組み込み、クローニングを行った。A_3(T.W.)からの3つのクローン、A_3(M.T.)からの1つのクローン、通常のA_1型から9つのクローンを得て、それらの塩基配列を決定する作業に入っているが、その中で、A_3型から得られたあるクローンの塩基配列が、通常A_1型の塩基配列に比して、連続した15bpの置換があることを見い出した。そこで、現在、この塩基配列とA_3型発現との関連性について検討中である。
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