ABO式血液型の遺伝子exon部分の構造はHakomoriらの研究グループによって判明したものの、その発現をregulateするpromoter領域やsplicingなどのpost translational controlについての知見は皆無である。先に我々が見い出した富山県に高頻度に見られるA3型は分泌線におけるA抗原の発現は通常のA1型と同様で、血清中にも通常のA合成酵素が産生されているのに、赤血球上のA抗原の発現が抑制されている変異型であって、分泌組織と造血組織で形質発現が異なる。従って、この変異型は研究目的に適合したもので、これを材料として研究を展開している。これまでにA遺伝子の酵素活性に関係するexonについて、splicing donorとsplicing acceptor領域の塩基配列を決定したが、この部位では通常のA1型とA3変異型に差異がないことが示された。現在はpromoter領域を決定する作業に入っており、将来この領域におけるA1型とA3型のゲノムDNAの差異と形質発現の関係を調べる計画である。
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