研究概要 |
(1)パラフィン包埋組織片からのABO式血液型遺伝子型の判定 常法にて作成したパラフィン包埋組織からDNAを抽出したところ,得られたDNAは非特異的な分解を受けており概ね100bpから2kbpの分子量サイズであった.このため,以前に我々が報告した新鮮血から得たDNAを用いたPCR法による遺伝子型判定方法は直接応用することができなかった.そこで,1)より短い断片(128bp,200bp長)を増幅するようにデザインされたプライマーを用い,2)1回目のPCR産物の一部を鋳型として再び同様に2回目のPCR増幅を行なう.といった改良を加えた.ホルマリン固定の影響等によりDNAは低分子化するとされており,固定臓器片からあるいは固定後パラフィンに包埋した組織片から抽出したDNAを鋳型としてPCR増幅を行なうことは困難な場合があるといわれているが,本方法によれば,最長10年を経たパラフィン包埋組織からも,検討したすべての例において,判定に足りる量のDNA断片を得ることに成功した.また,本方法により判定された血液型の遺伝子型は,いずれも,剖検時に血液を用いてあるいは臓器切片から免疫組織化学的に調べた血液型の表現型と矛盾しなかった. (2)血液型抗原物質の分布 血液型抗原物質の存在意義と機能を調べるため,ヒトの唾液腺,胸腺および生殖器ならびにイヌ,ニホンザルの各臓器の組織切片を用いて,レクチンおよび免疫組織化学的にABH関連抗原物質の分布をみた.
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