脳死7例(脳挫傷5例)および非脳死13例(脳挫傷3例)の脳を検討した。 1.非脳死脳(死後6時間〜3日)では、HE染色およびクリューバー・バレラ(KB)染色の染色性は一部を除き一般に良好であった。グリア線維性酸性プロテイン(GFAP)染色では、死後2〜3日でアストロサイト胞体の突起が不明瞭となり輪郭も鈍化し、末梢部突起の断裂、顆粒状化を示した。ミエリン塩基性タンパク(MBP)染色の染色性は良好であった。 2.非脳死脳の脳挫傷部位では、死後2日でHEおよびKBの染色性の低下。死後20時間で挫傷出血周辺のオリゴデンドログリアの急性腫脹、GFAP染色で小さく濃染したアストロサイトと突起の断裂が認められた。〓痕化部位では、グリオーシス、肥胖性アストログリアおよびMBP陽性のオリゴデンドログリアが認められた。 3.脳死脳(死後4〜24時間、脳死期間1〜7日)では、HEおよびKBの染色性が低下し、神経細胞が均一に染まり、腫脹したオリゴデンドログリアを認めた。この所見は脳死期間が長いほど明瞭であった。GFAPの染色性は低下傾向を示し、陽性のアストロサイト数も少なく、突起の少ない鈍な胞体で、末梢部の突起は断裂傾向を示した。MBPの染色性は一般に良好であったが低下を示したものもあった。またミエリンの膨化も認められた。 4.脳死脳の脳挫傷所見では、脳死に陥るまでの第1過程の期間(1〜7日)で相違が認められた。第1過程で形成された所見はその後の脳死期間(1〜7日)から解剖に到る第2過程でも良好に保持されていた。第1過程の長い脳では、神経細胞壊死以外に肥胖性アストログリア、グリオーシス、マクロファージ、血管外膜肥厚・増殖などが認められたが第1過程が短い脳では認められなかった。
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