研究概要 |
脳ミオシンアイソフォームを指標とする脳損傷の診断法を開発する目的で、脳ミオシンアイソフォームのサンドッチELISAによる高感度検出法について検討した。固相抗体、検出抗体の選定、反応条件の設定等を行い、極めて高感度な検出法を確立することができた。本法は、吸光度法で2.5-500ng,蛍光法では10pg-10ngの範囲で定量が可能であり、十分に実用に供しうる方法と考えている。 本法により、脳損傷受傷ラットにおける血清中の脳ミオシンアイソフォーム量増加が確認されたが、損傷の程度と脳ミオシンアイソフォーム量との相関は、損傷程度のコントロールが困難で現在のところ明確ではない。 脳組織の特定に本法を用いると、新鮮組織での0.1mg以下の微量組織量で特定可能であり、2週間経過した乾燥組織においてもほぼ同程度の量でも特定可能であった。従って、組織化学的に特定不可能な微量組織からも本法により脳組織の特定が可能となった。 種々の原因で死亡した死体血中の脳ミオシンアイソフォーム量を本法により測定すると、死後24時間以内の死体血では、明らかに脳損傷による死亡例で脳ミオシンアイソフォーム量が増加していたが、死後24時間以上経過したものでは、死因に無関係に著しく脳ミオシンアイソフォーム量が増加した例が認められた。この死後長時間経過した死体血に見られる脳ミオシンアイソフォームの由来および、脳損傷に伴うものとの識別について現在検討中である。 以上の結果は、第40回日本法医学会近畿地方会で報告され、今後の成果も加えて第78次日本法医学会総会において報告される予定である。
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