平成5年度は、後天的にヒトDNA中に再構築されるDNAを探す目的で、正常なヒトの血液および組織中のEpstein-Barr(EB)ウイルスゲノムの検索を行った。 EBウイルスのBamW領域のプライマーを使ったPCR法で、正常なヒトのリンパ球から分離したDNAから、EBウイルスゲノムを証明することができた。また、EBER領域のプライマーを使ったRT-PCR法でより高感度にEBウイルスを検出することができ、ほぼ100%のヒトの末梢血DNAからEBウイルスゲノムを検出することができた。さらに、手術によって摘出されたEBウイルスに無関係な疾患の扁桃組織を使って、in situ hybridization法でEBウイルスの局在を調べた。 その結果、扁桃組織の主要部分であるBリンパ球中にはEBウイルスは検出されず上皮細胞内に存在することがわかった。これらの成績より、正常ヒトリンパ球および上皮細胞内にはEBウイルスが存在し、これらのウイルスは血清中の高い抗EBウイルス抗体価にもかかわらず、持続的に感染していると推測された。 このEBウイルスがどのような状態で細胞内に存在するのかを、LMP1、EBNA1、EBNA2、EBER1およびEBER2などの領域をプローブとしたmRNAに対するin situ hybridization法により明らかにし、この持続感染しているEBウイルスゲノムが後天的なDNAマーカーとして有用かどうかを次年度以降で明らかにする。
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