研究概要 |
突然死、特に心臓突然死の生前の病態を把握する目的で、剖検時に採取した死体血について臨床生化学的分析を行った。また、心臓突然死の病因解析のひとつの試みとして、若年者の高度の冠動脈硬化症による突然死例について高比重リポ蛋白(HDL)の動向が関係あるか否かを検討する目的で、PCP法によりコレステロールエステル転送蛋白(CETP)の遺伝子診断を行った。さらに、心臓突然死例がミトコンドリアDNA(mDNA)の変異、欠損に関連するかを検討する目的で、剖検心の心筋からmDNAを抽出し、その変異、欠損の程度を検討した。その結果、臨床生化学的分析では早期の虚血生心疾患で臨床的に診断価値の高いLDH,CPK,GOT,GPTなどの血清免脱酵素や血清ミオグロビン値は死体血ではいずれも死後変化として異常高値を示すので利用できず、LDHやCPKなどのアイソザイム分析に期待したが、心臓突然死群にはコントロール群に比べて特異的な傾向は認められなかった。ただし、死体血では生体血とアイソザイムの分布パターンが全体に異なっていることが判明し、この点と心臓突然死との関連性は今後の問題である。CETPの遺伝子診断では、若年者を含め高度の冠動脈硬化症があるにもかかわらず、CETP遺伝子のホモあるいはヘテロ接合体は発見されなかったので、HLDに特に問題はなかったと推定された。またmDNAに関しては、多数の変異が認められたが、心臓突然死との明らかな相関は認めらなかった。
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