研究概要 |
凝固第13因子Aサブユニット(以下,F13A)タンパクの遺伝的多型のベースとなっている塩基配列上での変異を明らかにした。F13Aの遺伝的多型はタンパクレベルでは4つの対立遺伝子F13A〓1A,〓1B,〓2A,〓2Bから決定される10の遺伝子型からなることを1988年に国際誌に報告したが,その時点で我々は,多型生成には2カ所の塩基置換と1回の遺伝子内交叉が多型生成に関わっているという仮説をたてた。F13Aの4対立遺伝子多型は国際的にはほとんど追試がなされず,認められていなかったと思われる。しかしながら,本研究の結果,仮説として提出したとおり,2カ所3塩基の置換が発見された。すなわち,4つの対立遺伝子のうち任意のひとつを人類誕生時の祖先遺伝子とした時,その遺伝子において異なる2カ所での点突然変異の結果,あらたに2つの対立遺伝子が生じた。さらに,これら2つの対立遺伝子間での遺伝子内組み換えによって4つめの対立遺伝子が生まれ,現在の4対立遺伝子となっていることを実証したのである。組み換えが生じたことを証明するための実験を現在行っているところである。 また,F13Aの変異型は,日本人集団ではきわめて稀であるが,タンパクレベルでは同一の変異型と思われていた2例が,塩基配列の解析の結果,全く異なる変異遺伝子であることがわかった。そこで,現在ドイツの研究グループと共同で,白人集団の変異型多数についてそれらの塩基置換を解析中で,非常に興味深いデータを得つつあるところである。
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