研究概要 |
アポEは超低比重リポ蛋白(VLDL)、VLDLレムナント(IDL)、カイロミクロンレムナントなどのいわゆるatherogenic リポ蛋白であるTG-rich リポ蛋白の主要構成蛋白の1つである。TG-rich リポ蛋白およびそのレムナントはアポEあるいはLDL(アポB,E)リセプターを介してマクロファージに取り込まれコレステロールエステル(CE)の蓄積を起こし動脈硬化の進展をもたらす。その際アポEがリガンドとして関与する。糖尿病のTG-rich リポ蛋白は1分子あたりのアポEの数が多く、そのため、よりマクロファージに取り込まれやすくatherogenic であることを見出した。糖尿病のTG-richリポ蛋白のそのアポE/アポB比非糖尿病のそれに比べて有意に高値であった。糖尿病のTG-rich リポ蛋白のatherogenicityが明らかとなり、糖尿病においてしばしば観察される高TG血症の治療の意義を示唆した。アポE2はリセプターへの親和性が弱くTG-rich リポ蛋白が血中に蓄積しIII型高脂血症や高TG血症をもたらし、アポE4はその反対の作用により高LDL 血症をもたらす。アポε2,ε4遺伝子頻度は虚血性心疾患において有意に高値であること、アポE2,E4はatherogenic であることを明らかとした。PCR-RFLP法によるアポE genotypingを確立した。高脂血症と関連したアポE mutantを現在検索中である。また、アポE2は血中RLP(remnant-like particles)を増加させ、atherogenic に作用していることも明らかにした。アポE2を有する者はpostprandial lipemiaを起こしやすく、高脂肪食負荷後にTG-richリポ蛋白が蓄積しやすいことも報告した。RLPやTG-richリポ蛋白のヒト単球由来マクロファージに対するCE取り込み能、すなわちそのatherogenicityを検討した結果、糖尿病やアポE2と関連した高脂血症患者のRLPやTG-richリポ蛋白はCE取り込み能が増加している、すなわちatherogenic であることが判明した。トリグリセライドのatherogenicityを示すものである。
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