研究概要 |
マウス自己免疫性甲状腺病変部より樹立された4種類のCD^<4+>T細胞クローンについて、前年度、マウス、ウシ、及びヒト由来のサイログブリン(Tg)に対する反応性を検討した結果、TgがCD^<4+>T細胞の認識する主要な自己抗原であることが明かとなったが、これら異種Tgに対するT細胞クローンの反応性の結果より、Tgには少なくとも3個以上の甲状腺炎を誘導するエピトープが存在すると考えられた。 次に、各種Tg合成ペプチドを抗原として用いて,CD^<4+>T細胞クローンの増殖反応をT細胞芽球化反応(^3Hサイミジンの取り込み)を指標として検討し、各T細胞クローンの認識するTgのエピトープを決定することを試みた。Tgは非常に大きな分子であるので、我々はまずホルモン合成に関与するチロシン残基を含む部位に着目し、3種類の合成ペプチドを作成した。TA(HTg 1-11)のアミノ酸配列はマウスについては不明だがヒトとウシで全く同一である。TB(HTg2546-2571)はヒト、ウシ、ラット(マウス)という種を超えて非常に相同性が高い部位である。一方、TC(HTg2738-2748)はウシには類似しているがラット(マウス)とは相同性がやや低い部位である。また、TBはRothbardのAlgorithmに合致するエピトープとなる可能性の高い部位を含んでいる。これらに対する各CD^<4+>T細胞クローンの増殖反応を検討した結果、今回検討した4個の代表的なT細胞クローンはいずれも、TA、TB、TC、TB-I(ヨード化TB)に対し有意な増殖反応を示さなかった。即ち、甲状腺炎病変部より分離され甲状腺炎を誘導する能力を持つCD^<4+>T細胞クローンが、チロシン残基を含むホルモン合成部位をエピトープとして認識しないことが示された。今後、ヒトあるいはウシTgのcDNAを用いて比較的大きなフラグメントの合成ペプチドを作成し、更に検討を進める必要があると考えられた。
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