研究概要 |
ムコ多糖合成系への情報伝達、修復機序を多種のムコ多糖、とくにコンドロイチン硫酸(CS)とデルマタン硫酸(CS)異性体A,B,C,D,E,G,H,Kタイプ,ヘパラン硫酸(HS)異性体の分別定量から検討した。ムコ多糖を酵素(chondroitinase-ABC,-AC,heparitinase-I.-II)分別法、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて対比し、以下の成績を得た。これより、本法はムコ多糖研究の骨子となり、炎症修復・治癒過程、細胞増殖など細胞間マトリックスの分子種変動を解析するのに有効であることを示した。 1)ヒト尿中ムコ多糖の構成成分解析: 尿中ムコ多糖は、マトリックス成分の産生物質として、生体代謝機構の解明に重要である。そこで酵素分解後、不飽和構成二糖(ΔDi-S)に分解し、これをHPLCにより分析した。その結果ヒト尿には主CSムコ多糖としてΔDi-4S,ΔDi-6S,ΔDi-0Sを認め、その他ΔDi-diS_G,ΔDi-diS_B,ΔDi-diS_H,ΔDi-diS_Eの存在を確認した。またΔDi-triS,及びΔDi-diS_Bの新しいΔDi-diSが検出出来た。特にハーラー症候群では高濃度のDSが含まれ、その他のΔDi-diS_B、ΔDi-diS_H,ΔDi-0Sの増加の他、ΔDi-diS_G,ΔDi-S_2の異常構造を認め、ハーラー症候群がDS異性体、ΔDi-diS_2系の代謝異常によることを証明した。HS異性体はΔDi-0S,ΔDi-6S,ΔDi-NS,ΔDi-dis_2,ΔDi-diS_1,ΔDi-triSを認めた。全身性硬化症患者の尿中ムコ多糖ではほぼ同様なパターンで,ΔDi-Sが検出された他、ΔDi-diS_B,ΔDi-diS_Hが相対的に多く検出された。 2)十二指腸壁高分子ムコ多糖:二次元電気泳動により未消化高分子ムコ多糖を同定した。またHPLCによるムコ多糖の同定を行い,蛋白・炭水化物分解酵素の多い十二指腸壁にはDS,HSが多く全ムコ多糖の1/3以上を占め、CSは少なかった。分子特異性体の同定をHPLCで行ったおこなった結果CS系ではΔDi-4S,ΔDi-6S,ΔDi-0S,ΔDi-4S(DSタイプ)が認められ、食道、胃壁とは異なる構成成分であることが判明した。 3)関節滑膜組織をリウマチ、変形性など、対象正常関節より採取した結果、始めてヒト関節軟骨にDS異性体が(5-10%)存在することを見出、正常ムコ多糖主成分であるCSに加え、DSが病的組織滑膜・軟骨組織の線維性変化に平衡して増加することを証明した。
|