慢性関節リウマチの骨破壊における骨芽細胞および破骨細胞の接着因子とその役割

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05670425
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 神宮 政男 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教授 (10038523)
• 研究分担者: 末永 康夫 九州大学, 生体防御医学研究所, 助手 (20264111) ; 和田 哲也 九州大学, 生体防御医学研究所, 助手 (30220958) ; 野中 史郎 九州大学, 生体防御医学研究所, 助手 (60198603)
• キーワード: 慢性関節リウマチ / 破骨細胞 / 骨芽細胞 / ICAM-1 / ICAM-1単クローン抗体 / IL-1β

研究概要

ヒト骨芽細胞(OB)、ヒト破骨細胞の接着分子発現に対するICAM‐1単クローン抗体(mab)の影響を検討した。
ゼラチンコート96穴に細胞をうえ、前培養後ICAM‐1 mab(1μg/ml)添加16時間培養後固定した。ICAM‐1 mab(-)系をコントロールした。固定後、VCAM‐1 mab(2μg/ml)0.1mlを加え反応後、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG(Fab′)で反応発色後CD450で測定、VCAM‐1 mab(-)系のOD値を差し引いた値をVCAM‐1発現量とした。その他の接着分子発現もVCAM‐1 mabのかわりに各mabを用い、同様に行った。
OBにおいて、ICAM‐1mab(1μg/ml)添加6時間培養することにより、OBのVCAM‐1、ELAM‐1、LECAM‐1発現は有意に高まったのに対し、ICAM‐1発現には差はなかった。この際、非特異的マウスIgGをICAM‐1 mabのかわりに添加しては接着分子発現には影響はなかった。これに対し、VCAM‐1、PECAM‐1およびLECAM‐1 mabを添加培養してもICAM‐1発現は影響を受けなかった。
一方、OCにおいても、ICAM‐1 mabを添加6時間培養により、VCAM‐1、ELAM‐1、PECAM‐1、VLA‐4、およびLFA‐1の発現が有意に高められた。
以上より、ICAM‐1 mabはOBやOCに作用し、ICAM‐1そのものに対してはブロックする可能性があるも、ICAM‐1以外の接着分子発現を増強することから、ICAM‐1以外の接着経路が作動し、結果的にICAM‐1 mab添加しても、OC/OB系による^<45>Ca遊離が抑制されないという成績(前年度)が出ても不思議ではない。このようにOB、OCには接着分子カスケードが存在し、生体防御に関与するのであろう。同様のことは血管内皮細胞や滑膜細胞でも証明された。

研究成果

• [文献書誌] Kuroki.T.: "Effects of cytokines on alkaline phosphatase and osteocalcin production,calcification and calcium release by human osteoblastic cells." British J Rheumatol. 33. 224-230 (1994)
• [文献書誌] 神宮政男.: "オ-ラノフィンの慢性関節リウマチ患者単核球リウマトイド因子およびサイトカイン産生抑制作用." 炎症. 14. 21-23 (1994)
• [文献書誌] Nobunaga,M.: "Course and outcome of rheumatoid arthritis:Comparisons among the patients in these 40 years." Jpn.J.Rheumatol.(in press). (1994)
• [文献書誌] Shingu,M.: "Complement degradation products in rheumatoid arthritis synovial fluid." British J Rheumatol. 33. 299-300 (1994)
• [文献書誌] Shingu,M.: "Production of soluble ICAM‐1 by mononuclear cells from patients with rheumatoid arthritis." Inflammation. 18. 23-32 (1994)
• [文献書誌] Shingu,M.: "Possible mechanism of vascular in pre‐eclampsia in damage pre‐eclampsia." J.Human Hypertension. 8. 177-180 (1994)
• [文献書誌] 神宮政男,: "骨芽細胞と破骨細胞における接着分子発現と細胞間相互作用-慢性関節リウマチの骨破壊における関与-" 炎症. 14. 467-472 (1994)
• [文献書誌] Shingu,M.: "Anti‐inflammatory effects of recombinant human manganese superoxide dismutase on adjuvant arthritis in rats." Rheumatol Int. 14. 77-81 (1994)
• [文献書誌] Shingu,M.: "Role of oxygen radicals and IL‐6 in IL‐1‐dependent cartilage matrix degradation." Inflammation. 18. 413-423 (1994)
• [文献書誌] Shingu,M.: "Effects of cytokine‐induced soluble ICAM‐1 from human synovial cells on synovial cell‐lymphocyte adhesion." Clin Exp Immunol. 97. 46-51 (1994)
• [文献書誌] 神宮政男,: "慢性関節リウマチ患者単核球によるsoluble IL‐2 receptor,IL‐4およびIL‐6産生に対するオ-ラノフィンの影響." 炎症. 14. 401-404 (1994)
• [文献書誌] 任 〓雪,: "膠原病患者におけるInterleukin‐1 receptor antagonistの意義." リウマチ科. 11. 260-261 (1994)
• [文献書誌] Ezaki.I.: "Analysis of the genes encoding yhe variable regions if human IgG rheumatoid factor." J.Rheumatol. 21. 2005-2010 (1994)
• [文献書誌] Hashimoto.H.: "Production of soluble ICAM‐1 from human endothelial cells by IL-1β and THF‐α." Inflammation. 18(2). 163-173 (1994)
• [文献書誌] 橋本 通,: "慢性関節リウマチ患者血清中エリスロポイエチン・G‐CSF濃度に関する検討" リウマチ科. 12(3). 219-223 (1994)
• [文献書誌] 橋本 通,: "慢性関節リウマチに皮膚筋炎を合併した2症例." 内科. 74(5). 975-977 (1994)
• [文献書誌] 橋本 通,: "成人/小児発症Still病に続発した消化管アミロイドーシスの3症例." 臨床リウマチ. 6(2). 93-101 (1994)
• [文献書誌] 橋本 通,: "皮膚筋炎を合併した慢性関節リウマチ症例‐とくに酵素結合免疫グロブリンについて." 九州リウマチ. 14(2)(in press). (1995)
• [文献書誌] 橋本 通,: "若年性関節リウマチ,慢性関節リウマチに続発した小腸アミロイドーシスの2例." リウマチ. 35(1)(in press). (1995)
• [文献書誌] 神宮政男,: "慢性関節リウマチ患者末梢血単核球によるsoluble IL‐2 receptor,IL‐4およびIL‐6産生に対するオ-ラノフィンの抑制作用" 炎症. 14. 401-404 (1994)
• [文献書誌] 神宮政男,: "慢性関節リウマチ患者単核球に対するT‐614およびその誘導体の影響" 炎症. 15. 55-59 (1995)
• [文献書誌] 神宮政男,: "早期慢性関節リウマチ診断における血清MMP‐3濃度測定の臨床的意義" リウマチ. 35. 15-24 (1995)
• [文献書誌] Kuroki.T.: "Effects of cytokines on Alkaline Phosphatase and osteocalcin production,calcification and calcium release by human osteoblastic cells." British J Rheumatol. 33. 224-230 (1994)
• [文献書誌] Shingu,M.: "The role of LI‐4 and IL‐6 in IL‐1‐Dependent cartilage matrix degradation" British J Rheumatol. 34(in press). (1995)
• [文献書誌] 神宮政男,: "専門医による慢性関節リウマチの治療指針." メディカルレビュー社,大阪., (1994)