研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)患者骨髄から得た破骨細胞(OC)と骨芽細胞(OB)の接着分子は多彩でICAM-1, VCAM-1, ELAM-1などが発現され,炎症性サイトカインにより増強された.OCではさらにVLA-4, LFA-1も発現増強された.OC/OB相互作用によりOB機能は抑制され,これには上記の接着分子を介する接着反応が必須であることが示唆され,OCによる骨吸収も同様であった.OCはサイトカイン,プロテアーゼ,活性酸素など種々の炎症メディエーターを産生,OCによる骨吸収にはこれらが関与していた.特にメタロプロテアーゼとそのインヒビター(MMP, TIMP-1)が重要である.RAOCの骨吸収活性は非RAに比べ差はなかった.RA滑膜細胞(SC)の中にはTRAP陽性のものがあり,程度と頻度は低いが骨吸収活性がみられた.変形性関節症(OA) SCにはこれらの特徴はみられなかった.骨由来タイプIコラーゲンフラグメント(ICF)のELISAキャットによる測定はピット形成がなくても検出され,ピットアッセイに比べ骨吸収の感度の良い定量法であることが示された. RA患者骨髄およびヒト骨髄からそれぞれ得たOC, OBにICAM-1単クローン抗体(mab)を添加培養すると前者ではVCAM-1, ELAM-1, PECA-1, VLA-4, LFA-1,後者でもVCAM-1, ELAM-1, LECAM-1の接着分子発現が有意に著名に増強された.これはICAM-1を抑えると他の接着分子が代償的に働き,いわゆる接着分子カスケードの存在を示唆する.実際,タイプIIコラーゲン関節炎マウスで2回目の免疫3日前にICAM-1mabを2mg/mouse腹腔内投与しても対照と比べ関節炎の程度には差はなかった.ヒトOB/OC共存培養系では上清のICFとアルカリフォスファターゼ活性にはmabの影響はなかった.RA患者由来OCをCD51mab-, CD34mab-コートディッシュで培養し,TRAMP染色と象牙切片と培養した上清のIGFを測定した所,mab(-)に比べ,CD34mab(+)で有意に高かった. 骨髄由来OCにつき,ICF浮遊活性とTRAP染色の点でみると,OAに比べICFは有意に高いがTRAP陽性率は差なく,RAのOCは量よりも質的に差があると思われた.
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