研究概要 |
私達はHTLV-I感染と一次性Sjogren症候群(SjS)との関連に注目し研究を進めている。まず、疫学的にはSjS患者は対照者(供血者)に比較して抗HTLV-I抗体陽性頻度が有意に高かった。すなわち、抗HTLV-I抗体陽性者はSjSに罹患する危険率が対照者より高く、これは特に50歳以下の陽性者で顕著であった。ウイルス学的にはSjS患者は血清中の抗HTLV-I抗体価が高く、特にIgMクラスの抗体はHAM患者と同程度に検出された。 最も注目される結果は唾液中にはIgMクラスの本抗体がSjS患者でのみ検出され、HAMキャリアーでは検出されなかった。この結果からSjS患者では唾液腺内でHTLV-Iに対する免疫応答が活発に惹き起こされていることが考えられた。 口唇唾液腺組織ではHTLV-IcDNA(gag,pol,Tax,LTR領域)がPCRで検出された。HTLV-Iはin vitroで滑膜細胞や血管内皮細胞に感染し、感染した細胞はGM-CSF,G-CSFやIL-6を産生した。また、Tax蛋白はIL-6遺伝子をトランスに活性化させる。これはIL-6遺伝子のエンハンサー/プロモーター領域のNF-kB領域が重要であることを明らかにした。以上より、Tax蛋白はウイルスの複製と同時にIL-6をはじめ、TNF-α、TGF-β、GM-CSF,c-fosなどの遺伝子を活性化させることができ、SjSの進展・増悪の一因になっていることが考えられた。 新しい治療法の開発ということで、合胞体形成系を確立し研究を進めた。すなわち、合胞体形成を低分子デキストラン、ヘパリンや抗接着分子抗体(CD18とICAM-3)が抑制することを明らかにした。 最近、慢性関節リウマチをはじめ自己免疫疾患の原因としてレトロウイルスが脚光を浴びている。今回の私達の結果はSjSの病因としてHTLV-I感染が関与していることを明らかにした。
|