研究概要 |
慢性肉芽腫症は、食細胞のスーパーオキサイド産生酵素活性が欠損しているため、殺菌能が低下し,乳児期より重症細菌感染を繰り返す疾患である。この酵素は酵素本体である91Kdと22Kdからなるチトクロームb558膜蛋白とその調節蛋白である47Kd,67Kd,21Kdの3つ細胞質蛋白から構成されていること、さらに刺激によりこれらの蛋白が膜で活性型酵素複合体となることも前回の同研究で明らかにしてきた。 今回は上記の成果の基ずいた基礎的研究として、p47欠損型の患者の遺伝子解析(BBRC199:1372-1377,1994.)、racp21の膜移行についてアラキドン酸とGTPが必要なこと(BBRC 195:264-269,1993)、p22-phoxの第81番目からアミノ酸配列がこの酵素の活性化にとって重要なこと(BBRC 204:924-929,1994)さらにp47のSH3 locusとp22-phoxのカルボキシール末端のprolin richな領域がinteractionしている(PNAS 91:5345-5349,1994)事などを明かにした。さらに臨床的研究として、本邦での共同研究により慢性肉芽腫症患者の統計と病型分類および遺伝子解析を行い、発生頻度は少なくとも25万人出生に一人であることが明らかになった。さらに欧米のIFN-γの慢性肉芽腫症患者の臨床的改善に対する有効性の報告を受けて、本邦でも共同研究で、欧米と同様感染罹患回数、延べ入院日数などの有意の減少が確認された(日本小児科学会雑誌98巻:1048〜1056、1994)。 慢性肉芽腫症患者の治療法としてはST合剤(バクトラミン)やIFN-γによる感染予防効果と骨髄移植以外、現在可能な治療法が殆どなく、今後この分野でも遺伝子治療が期待されており、それに必要な基礎的研究を行なう予定である。
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