研究概要 |
本研究は、自己免疫疾患のプロトタイプの一つであるシェ-グレン症候群におけるヒトヘルペスウイルス6および7(HHV-6,HHV-7)の病因論的関与について、T細胞とりわけウイルス特異的T細胞免疫応答の観点から追求し、自己免疫の成因のメカニズムを明らかにしようとするものである。 1.シェ-グレン症候群患者および対照者から採取した小唾液腺より、IL2を用いて局所浸潤T細胞を分離増殖させ、HHV-6およびHHV-7をそれぞれ感染させた臍帯血単核球(CBMC)をsonicateして得た抗原で患者末梢血単核球を感作し、それに対するautologousの唾液腺浸潤T細胞の反応性を測定したが、ウイルス特異的増殖反応は認められなかった。 2.シェ-グレン症候群患者および対照者より血清を採取し、HHV-6(阪大微研、山西博士より供与)およびHHV-7(米国NIAID、Frenkel博士より供与)を感染させたCBMCを抗原として蛍光抗体法により、血中の抗HHV-6抗体価および抗HHV-7抗体価を測定した。測定系そのものは鋭敏であると考えられたが、シェ-グレン症候群患者血清中の抗核抗体によると考えられる非特異的蛍光が認められ、そのままでは定量化が困難であることが判明し、以後、ELISAによる測定法を開発した。これによると、シェ-グレン症候群における各抗体価は高値の傾向が認められる。 本研究で我々の行なったアプローチである組織よりのT細胞分離とその機能的解析の方法論的確立は、病因抗原を病変組織T細胞免疫応答の観点から追求する上できわめて有用と考えられた。本研究では、標的ウイルスとしてHHV-6、HHV-7に着目したが、特異的抗体価の上昇は、液性免疫における本症とHHVのリンケージを示唆している一方、病変局所における炎症の形成と組織破壊には、HHV特異的T細胞免疫応答は直接関与していないことが強く示唆された。
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