研究概要 |
【目的】本研究では,全身性エリテマトーデス(SLE)の母親およびそのその児を対象に、妊娠中から周産期,さらに児のその後までの転帰と予後について,遺伝的,免疫学的所見を中心に調査し,児の保全と健康維持を図る方策を図ることを目的とする。 本年度は,これまで集積されたSLEの母親から出生した児の実態について報告する。 【対象および方法】対象は,当院にてSLE母体から出生した112例である。1)新生児期および2)1歳から11歳の時点に臨床症状および免疫学的検査を検討した。 【結果】1)新生児期:在胎週数は28〜42週で早期産児32例(29%),出生体重は765〜3986gで低出生体重児52例(46%),SFD児40例(36%)で,早期産および低出生体重児の頻度が高かった。またNLE症状では,皮疹6例,白血球/血小板減少9例,貧血1例,A-Vブロック2例の計15例(13%)を認めた。SS-A抗体およびSS-B抗体は,それぞれ75例中43例および66例中12例で陽性であった。A-Vブロックを伴った2例では両抗体が陽性で,1例は新生児期に死亡した。他のNLE症状とSS-A抗体およびSS-B抗体には明らかな関連は認められなかった。2)1〜11歳時:新生児期に死亡した1例を除く111例中,1例にSLEの発症があり,女児であった。1〜11歳の時点に診察および血液検査を施行できた35例中,6例(17%)で血清中の抗核抗体が陽性で,このうち5例が女児であった。またアレルギー性疾患が22例(61%)にみられ,14例(40%)で血清IgE高値を認めた。 【考察】SLE母体の出産では,早期産および低出生体重児の頻度が高く,出生前からの専門的な管理が必要である。NLEについては,頻度は高くないが,A-Vブロックや白血球/血小板減少などは重篤である。また児に関するその後の調査での抗核抗体陽性例は女児が多く,SLEの発症など今後の経過観察が重要である。またアレルギー性疾患や血清IgE高値の頻度が高く,SLEの発症機序との関連性を明らかにする必要がある。
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