研究概要 |
これまで集計した全身性エリテマトーデス(SLE)65例の延べ126回の妊娠における調査結果では,流・死産は13%に認められ,そのリスクファクターとして抗カルジオリピン抗体,ループス抗凝固因子が重要視された。また,26例のSLEの母親から生まれた36人の児のうち28人(78%)は高IgE血症を有しており,健常児にくらべ有意に高い頻度であった(P<0.01)。そして,アトピー性皮膚炎や気管支喘息を有する児も有意に多く認められた(P<0.01)。これらの児の家系調査では,必ずしもアレルギー疾患を高率にみるわけではなく,特に,アレルギー疾患の家族歴のないSLEの母親から出生した児の高IgE血症は,母親の基盤にある免疫異常の一担を表現している可能性がある。 DNAタイピングによるHLAクラスII遺伝子の検討では,β_2-glycoprotein I依存性の抗カルジオリピン抗体は,DRB1*0901と有意に相関することを認めた(P<0.005)。抗カルジオリピン抗体ないしループス抗凝固因子を有する5例のSLE妊婦にデキストラン硫酸をリガンドとする免疫吸着法を施行し,いずれも児の出生を認めた。また,新生児ループスをみる児の出産には,母親が有するIgGクラスの52kDSS-A抗体と48kDSS-B抗体が重要視されるが,これらの抗体を有する3例のSLE妊娠に二重膜濾過血漿交換を施行し,現在のところ新生児ループスの発現を認めていない。以上のことから,SLEの母親から出生する児のリスクファクターと考えられる液性因子を体外免疫調節療法により除去する方策は,それらのリスクを軽減ないし防止しうる可能性が示唆された。今後も,本治療法によるprospective studyを継続しておこなう予定である。
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