研究概要 |
成人スチル病の著明な高フェリチン血症は膠原病・リウマチ性疾患のなかで特異性が高くその診断的意義や疾患活動性をみる指標として注目されている。しかしどのようにして高フェリチン血症が出現するのか、また出現した著増血清フェリチンが何か本症の病態形成に関与するのか明らかでないため本研究をおこない以下の知見を得た。1)著増血清フェリチンのイソフェリチンは塩基性フェリチンであり、フェリチンサブユニットはGサブユニットは極めて少なくLサブユニットが主体であった。この結果は本症の血清フェリチンが肝臓または脾臓由来フェリチンに近い性状であることを示している。2)健常人の血清フェリチンはGサブユニットが主体であるが、本症では血清フェリチンが正常となってもGサブユニットは極めて少ないことより、フェリチン分子への糖付加機構の異常が根本的に存在する可能性がある。3)血清フェリチンの鉄含有率(鉄/フェリチン蛋白量)は3〜5%で健常人とほぼ同程度であり、肝・脾フェリチンの1/5〜1/10であった。4)血清サイトカインレベルを検討した。IL-1β,IL-6,TNFα,IL-8といったサイトカインは活動期のレベルは非活動期と比べて有意に高値であったがIFN-γは有意差を認めなかった。近年種々の細胞株を使ってIL-1やTNFがこれら細胞内フェリチン産生を亢進させるとの報告があり本症でみられる高フェリチン血症にこれらサイトカインの関与が考えられる。5)著増血清フェリチンが本症の病態に積極的に関与する可能性を考えるとき、以下のシナリオが書けるかもしれない。即ち、活性化好中球やマクロファージからのO_2によって血清フェリチンから鉄(Fe^<2+>)が放出され、この鉄が触媒となってO_2とH_2O_2から最も組織破壊性の強いOHが生成され、本症の強い炎症に関与する可能性である。今回予備的実験ではあったが試験管内でOHの生成が検出された。今後更に研究を進展させる予定である。
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