コレステロール胆石症の成因におけるコレステロール結晶形成促進蛋白の意義

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05670445
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 田中 直見 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (60111530)
• キーワード: 胆石症 / コレステロール / コレステロール胆石症 / nucleation time / 胆汁蛋白 / α_1-acid glycoprotein

研究概要

最近、コレステロール(以下、cho)結晶の形成を促進する複数の糖蛋白(以下、促進蛋白)の存在が胆汁中に報告され、cho胆石の形成要因として国際的にも注目されている。本研究では、これら複数の促進蛋白の胆石形成における臨床的意義を明らかにすることを目的とした。研究初年度にあたる本年度は、抗体親和性カラムを用いて、ヒト胆嚢胆汁より、α_1-acid glycoprotein、免疫グロブリン(IgM,IgA,IgG)、phospholipase C、aminopeptidase Nの6つの促進蛋白を同時に単離精製することに成功した。単離した各糖蛋白の胆嚢胆汁における生理的濃度をcho過飽和人工胆汁に添加し、それらの促進活性を比較した。また、ヒト胆嚢胆汁から分離した強い促進活性を示すCon A結合分画を上記の各抗体親和性カラムにかけ、上記各糖蛋白を吸収除去した試料(吸収試料)を調整、これら吸収試料と未吸収のCon A結合分画の促進活性を比較することにより、各糖蛋白のcho結晶形成促進糖蛋白としての相対的重要性を検討した。その結果、1)免疫グロブリンおよびα_1-acid glycoproteinは、生理的濃度においてcho結晶形成を促進し、促進活性はIgM>α_1-acid glycoprotein=IgA>IgGの順に強いこと、2)一方、phospholipase Cおよびaminopeptidase Nは、生理的濃度において促進活性を示さないこと、3)胆汁Con A結合分画の促進活性は、phospholipase C、aminopeptidase Nおよび免疫グロブリンによっては規定されず、α_1-acid glycoproteinにより規定されていること、が新たに判明した。このように、これまで複数の研究グループにより別個に同定された種々のcho結晶形成促進蛋白を、同時に精製し、それらを比較した成績はこれまでになく、本研究により得られた新たな知見である。また、胆汁中α_1-acid glycoproteinに対するEnzyme-linked immunosolbent assay(ELISA)法を開発中である。

研究成果

• [文献書誌] 田中直見: "胆石の分類" 消化器診療プラクテイス 4.胆嚢症患-胆石症を中心に. 10-13 (1993)
• [文献書誌] 田中直見: "胆石症" 300症患診療マニュアル,中井利昭編,中外医学社. 172-173 (1993)
• [文献書誌] 田中直見: "胆汁酸" modern physician. 13. 1607-1609 (1993)
• [文献書誌] Abei Masato: "Isolation and characterization of a cholesterol crystallization promotor from human bile" Gastroenterology. 104. 539-548 (1993)
• [文献書誌] Abei Masato: "Cholesterol crystallization-promotors in human bile:Comparative promoting activities of immunoglobulins,α_1-acid glycoprotein,phospolipase,and aminopepidase" J Lipid Res. 34. 1141-1148 (1993)
• [文献書誌] Abei Masato: "Identification of human biliary α_1-acid glycoprotein as a cholesterol crystallization promotor" Gastroenterology. 106. 231-238 (1994)
• [文献書誌] 安部井誠人: "消化器内科診療プラクティス(4)胆嚢疾患 コレステロール胆石はどうしてできるか" 文光堂, 14-17 (1993)