コレステロール(以下、cho)胆石症の成因をめぐっては、胆汁におけるcho結晶形成の異常が成因の核心であるが、その原因は不明であった。最近、胆石患者の胆汁中にcho結晶形成を促進する複数の糖蛋白(cho結晶形成促進蛋白)が報告され、胆石形成の要因として国内外より注目されている。我々は、新たなcho結晶形成促進蛋白を精製し、α_1-acid glycoproteinと同定し得た。しかし、これらの促進蛋白を同時に比較した検討はなく、胆石生成における臨床的意義も定かではない。そこで本研究では、1)α_1-acid glycoproteinを含む複数の胆汁蛋白のcho結晶形成促進活性をin vitroで比較するとともに、2)各種の胆石、非胆石患者における胆嚢胆汁のα_1-acid glycoproteinを定量し、催石性の指標であるcho結晶析出時間と比較することにより、これらcho結晶形成促進蛋白の胆石生成における意義を探求した。その結果、これまでに報告されたcho結晶形成促進蛋白のうち、α_1-acid glycoproteinと免疫グロブリンは生理的濃度においてcho結晶形成促進活性を示すことが明らかになった。また、胆汁中α_1-acid glycoprotein濃度は、単発cho石や色素石例では上昇がみられない一方、多発cho石例において特異的に上昇しており、cho結晶析出時間と負の相関が認められた。以上より、胆汁中α_1-acid glycoproteinは、特に多発cho石発生の病態に深く関与している胆石形成の体質的因子であることが明らかになった。
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