炎症性腸疾患の大腸上皮はclass Iだけでなくclass IIのHLAも発現していることが知られており、近年のHLAの研究により、抗原は細胞膜上でHLAに抱かれたアミノ酸9〜13個のペプタイドとして存在することが明らかとなった。そこで本研究では炎症性腸疾患の大腸上皮細胞のclass Iおよびclass IIのHLAに抱かれたペプタイドを分析し、cytotoxic T細胞の標的となるペプタイド(class IのHLAの研究による)および大腸上皮細胞が抗原提示しているペプタイド(class IIのHLAの研究による)を明らかにすることを目的としている。まず、手術で得られた大腸上皮細胞よりホモジネートを作成した。このサンプルを抗HLA(class I)抗体を用いたaffinity chromatographyでHLAとペプタイドの複合体を抽出した。この複合体から酸処理にてペプタイドを採取し、分子量の差によりHPLCで分別した極微量のペプタイドのsequenceを分析を試みている。しかし、現在のところはaffinity chromatographyによるHLAとペプタイド複合体の抽出の条件に若干の問題があり、十分な量と純度のものが得られていない。このため、あとのsequence分析に支障をきたしており十分な成果は得られていない。今後、affinity chromatographyの条件の再調整等を行い、良質な抽出物が得られるよう検討している。
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