我々は初代培養家忠胃粘膜上皮細胞を用いて正常胃粘膜上皮細胞の増殖機構を検討した。我々の研究の成果は以下の諸点である。(1)家忠胃粘膜上皮細胞の増殖はEGF・TGFα・insulin・CAMPにより正に、TGFβによって負に制御されている。(2)proto-oncogeneであるc-fosやc-inycはこれらの増殖刺激因子で誘導されるが、増殖刺激の強さと誘導の強さは平行しない(3)胃粘膜上皮細胞はP_2プリン受容体を有するが、ATPの刺激は単独でもEGFと共に与えても増殖に影響を与えない。(3)肝細胞増殖因子(HGF)は胃粘膜上皮細胞の増殖・遊走を他の増殖因子にくらべ最も強力に促進する。(4)家忠胃粘膜線維芽細胞の培養調整液は胃粘膜上皮細胞の増殖・遊走を促進する。(5)胃粘膜上皮細胞にはhigh affimtyのHGFの結合部が存在し、HGFレセプターmRNAの発現が認められる。(6)家忠胃粘膜線維芽細胞にはHGFmRNAの発現が認められる。(7)人胃潰瘍にはHGFの発現が認められる。 以上の結果により正常の胃粘膜の増殖には各種増殖因子が関与するが少くともc-fosやc-mycの発現は本質的でないこと及び胃粘膜の修復にHGFが重要である事が示唆された。
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