研究概要 |
1.in vivoの系:ヒト肝疾患における各種コラーゲンをはじめとするマトリックスの局在については既に報告済みであるが、今回はマトリックス分解酵素の局在とその遺伝子発現を検討した。つまり、慢性肝炎、肝硬変の肝生検材料から、RNA法を抽出しPCRを用いてmetalloproteinase(MMP)-II,IXと、tissue inhibitor of metalloproteinase(TIMP)-I,IIの発現を検討中である。MMP-IIの組織内局在については、肝臓の主として類洞内皮細胞、伊東細胞に局在することが確認された。また、活性型のものは、内皮細胞膜、肝細胞膜上にも表出され、分泌された酵素が活性型として働く部位として、これらの細胞膜上が示唆され、現在追試中である。また、これらの結果は第28回肝臓学会西部会の主題示説において発表した。一方、実験的肝線維化過程とその回復過程における、各種MMPとTIMPの発現についても検討した。MMP-Iは肝線維化初期で発現がみられるが、それ以後は著明に発現が抑制され、TGF-βによる制御が考えられた。MMP-IIは線維化過程において、著明に増加し、線維化回復過程において徐々に低下し、TIMP-IIの動態もほぼ同様であった。組織内での発現は、主として類洞内皮細胞、伊東細胞であり、以上の結果は上記の学会で発表し、すでに投稿、掲載予定となっている。 2.in vitroの系:当科保有のヒト肝癌細胞株における、TIMPの産生とその遺伝子発現における各種薬剤について検討した。つまり、all-trans retinoic acidを添加すると、培養上清中のTIMP-Iの発現は増強するがTIMP-IIは低下した。また遺伝子発現でも同様の結果がえられ、現在その他のサイトカインの影響を検討中である。
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