我々は、多因子性遺伝疾患である消化性潰瘍の、遺伝的素因の遺伝子マーカーを検索することを目的とし、これまで、種々の候補遺伝子を用い検討してきたが、染色体6p21に位置するペプシノーゲンC(PGC)遺伝子の、制限酵素断片長の多型性(RFLP)が、胃潰瘍、特に胃体部潰瘍に関連することを認め報告してきた。本研究では、PGC遺伝子を手がかりに、染色体6番短腕上の、未知の胃潰瘍原因遺伝子の解明を目的とし、染色体6番上の多型性遺伝子マーカーと胃潰瘍との関連性の解析を検討した。 平成5年度は、高多型性を示す、染色体6p21.3に位置するHLAHLA-DQA1遺伝子について解析したところ、対立遺伝子HLA-DQA^*0101の頻度が、胃体部潰瘍で0.22と、胃角部又は胃前庭部潰瘍の0.08、対照群の0.10に比ベ有意に高く、対立遺伝子HLA-DQA^*0101を持つ者の胃体部潰瘍である相対危険度は2.80であることを認めた。このことは、胃潰瘍は疾患自身に異質性を示し、潰瘍のある部位により、胃体部潰瘍と胃角または胃前庭部潰瘍とで、その背景遺伝的素因において異なることが考えられ、胃体部潰瘍に対して、染色体6番短腕に関連遺伝子が存在する可能性が考えられた。また、胃十二指腸併存潰瘍においても同様の検討を行い、併存潰瘍においても、胃体部に潰瘍を持つものの背景遺伝的素因は、胃潰瘍の胃体部潰瘍と同様であることが考えられた。今後、さらに、染色体6番短腕の多型性マーカーを用い検討することを計画している。
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