研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)は極めて変異を起こしやすいウイルスで、特にHCV RNAのE2/NS1領域のN末端には25〜30アミノ酸残基よりなる超可変領域(Hyper variable region,HVR)が存在し、感染宿主の免疫監視機構に直接さらされているものと考えられている。従ってこの部分の塩基配列、アミノ酸配列を解析することは、C型肝炎の病態解析および将来のワクチン開発に極めて重要であると考えられている。 1.IFN治療例 C型慢性肝炎に対するIFN治療効果に関係する要因のうち、ウイルス側の要因としてHCV RNA量,HCV genotypeの重要性が指摘されている。しかしHCV RNA量,genotypeがほぼ一致しても、IFNの有効例と無効例が存在すす。そこで有効例3例と無効例3例につき、HVRの均一性を検討した。IFN投与前血清より任意に10クローンずつを選別し、HVRの塩基配列,アミノ酸配列を検討した。その結果、IFN有効例ではHVRがほとんど均一のHCV株が検出されたのに対し、無効例ではHVRのdiversityが高いことが判明した。 2.HVRに対する血清抗体 C型肝炎患者の経時血清につき、HVRの10-merからなるoligopeptideを1アミノ酸ずつずらして合計21組のdecapeptideを合成し、血清抗体の有無を検討した。その結果、経過とともにHVRの一部に対して血清抗体が産生され、まもなくその部分のアミノ酸配列に変異が生ずるHCV株が出現した。感染経過とともにenvelope抗体は集積し、HVRの変異も多様化した。このことがC型慢性肝炎におけるC型肝炎ウイルスゲノムのquasispeciesを説明する機序と考えられた。
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