世界で3番目、日本では初めて、Crigler-Najjar症候群I型患者ビリルビンUDP-グルクロニルトランスフェラーゼの遺伝子異常を決定し報告した。この遺伝子は一つの遺伝子から6つのトランスフェラーゼアイソザイムを転写、発現する。それぞれのトランスフェラーゼは五つのエキソンからなる転写ユニットからできており、5'端側に基質特異性を決めている、それぞれのトランスフェラーゼに固有なエキソン1が一かたまりとなって並び、3'端側に一組のみ、共通に使われるエキソン2-5が位置している。この遺伝子から転写されるトランスフェラーゼのうち2つがビリルビンを基質とすることが報告されている。このような遺伝子構造から、これまでCrigler-Najjar症候群I型では酵素活性が完全に欠損するので、エキソン2-5の領域におきた突然変異が2つの酵素活性を同時に消失させることが予想されていた。実際にアメリカ合衆国での2つの報告では予想通りの領域に変異が存在した。しかしわれわれが日本の患者で見いだした変異はエキソン1に停止コドンがホモで存在していた。この変異の発見により、これまで2つと考えられていたヒトのビリルビンUDP-グルクロニルトランスフェラーゼのうち、1つのみがビリルビン代謝に重要であることが明らかになった。また日本のCrigler-Najjar症候群I型の全患者、(三家系、4名)の遺伝子について変異を調べたところすべて同じ突然変異であった。さらにCrigler-Najjar症候群II型患者にビリルビンUDP-グルクロニルトランスフェラーゼのミスセンス突然変異を見いだし、遺伝子解析からもこの症候群が常染色体性劣性遺伝をすることを世界で最初に報告した。
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