研究概要 |
ヒト胃粘膜上皮細胞培養系の開発のための基礎的検討としてモルモット胃底腺粘膜上皮細胞の増殖に対する細胞増殖因子、サイトカインの効果を検討し以下の成績を得た。 各種細胞増殖因子、サイトカインの効果 モルモット胃底腺粘膜をcollagenase処理で遊離胃粘膜上皮細胞を調製し培養後、各種細胞増殖因子、サイトカインを添加し^3H-thymidineの取り込みで増殖促進作用を評価した。a-FGF,b-FGF,keratinocyte growth factor,IL-1β,IL-6,TNF-α,interferon-γには増殖促進作用は認められなかったが、EGF,HGF,insulinの添加は^3H-thymidineの取り込みを著明に増加させた。 胃線維芽細胞の産生する増殖因子 胃粘膜細胞に対して明らかに増殖促進効果を有するEGF,HGF,insulinの添加や血清の添加では胃粘膜上皮細胞は長時間維持できないため、胃粘膜上皮細胞下の線維芽細胞の産生する因子が胃粘膜上皮細胞に必要なのではないかと考え、次に胃線維芽細胞培養上清の胃底腺粘膜上皮細胞の増殖に対する効果を検討した。モルモット胃線維芽細胞の無血清培養上清は胃粘膜上皮細胞の^3H-thymidineの取り込みを増加させた。胃粘膜上皮細胞に対しては直接的な増殖促進作用の認められなかったIL-1βを添加して、培養した胃線維芽細胞の培養上清は非添加時に比し^3H-thymidineの取り込みを増加させることが観察され、IL-1βは胃粘膜上皮下に存在する胃線維芽細胞に作用し間接的に胃粘膜上皮細胞を増殖させると考えられた。 結論 胃粘膜上皮細胞の増殖制御にはEGF,HGF,insulin、胃線維芽細胞の産生する増殖因子が関与している。
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