ラット・D-galactosamin肝障害モデルを作成し、肝障害とその後の再生過程におけるプロテオグリカン(PG)の動態を検討した。免疫組織学的検討からは障害早期(6時間)に特異的にヘパラン硫酸PGの肝細胞からの一過性の消失とIto細胞でのコンドロイチン硫酸PGの産生が起こることが判明した。特にコンドロイチン硫酸PGについては障害早期に門脈域から中心静脈に向けて肝類洞の沿って放射状に染色性が一過性に増強する相と障害後3日以降に線維化に平行して染色性が増強する相の異なる2相があることが判明した。コンドロイチン硫酸PGの発現動態をdecorinおよびbiglycanのcDNAをprobeとしてin situ hybridization法とnorthern blottingにより検討したところdecorinとbiglycanはいずれも障害後4-7日でシグナルの1増強が認められたことから、これらの変化は障害後の線維化を反映していることが示唆された。障害早期(6h-3日)に抗Δdi抗体を用いて類洞に沿って一過性に検出されたコンドロイチン硫酸PGについては163kDaと152kDaのコア蛋白を有する別のPGであることが判明した。一方、障害早期で一過性に肝細胞膜から消失するのヘパラン硫酸PGはnorthern blottingによりfibroglycanである可能性が示唆された。我々の別の研究でfibroglycanはHGFと結合することが判明していることから、肝細胞増殖因子であるHGFの刺激を調節している可能性が示唆された。障害早期の一過性のコンドロイチン硫酸PGの増加とヘパラン硫酸PGの消失は、それぞれ協調して肝再生に必要な細胞の周囲環境提供していると考えられた。
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