研究概要 |
B型肝炎トランスジェニックマウス(TM)において、T細胞依存性抗原であるKLHに対する抗体産生が低下し、その障害機構にリンパ性樹状細胞(LDC)のMHC class IIの低下が関与していることを報告してきた。今回は、その障害機構を明らかにする目的でLDCにおけるMHC class II発現がγ-IFNにより回復するかどうかを in vivo、in vitroで検討した。また、TMに特異的抗原であるHBs抗原に対する抗体の産生能に及ぼすLDCの機能異常についても検討した。 (方法)B型肝炎ウィルスの遺伝子をトランスフェクションしたマウス(1,2HB-BS-10)の脾臓からSteinmann-Inaba法でLDCを単離した。単離したLDCにγ-IFN100-1000IU/mgを添加して培養した群と無添加群のLDCにおけるMHC claa II発現をフローサイトメトリーにより測定した。また、復腔内に5×10^4unitsのγ-IFNを6日間投与し、生体内でのLDCのMHC class II発現の上昇するか否かについても検討した。 (結果)γ-IFNの投与によりTMにおけるLDCのMHC class II発現は、in vivo、in vitroともに回復した。また、γ-IFNで前処理したTMのLDCとともにKLH感作マウスのT/B細胞を培養するとKLH抗体の産生の回復が認められた。TMにおけるin vitroのHBsAgに対する抗体産生はKLHと同様に障害されていたが、コントロールマウスの抗原提示細胞の添加により回復した。 (結論)TMにおけるT細胞依存性抗原に対する抗体産生能はLDCの機能不全によるものであり、γ-IFNの投与により回復し得た。特異的抗原であるHBs抗原に対する抗体産生においても、抗原提示細胞の機能不全が原因であり、LDCの機能回復することがHBVの持続感染の治療になることが推察された。
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