研究課題/領域番号 |
05670487
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研究機関 | 大分医科大学 |
研究代表者 |
藤岡 利生 大分医科大学, 医学部, 助教授 (90145368)
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研究分担者 |
久保田 利博 大分医科大学, 医学部, 助手 (30244172)
村上 和成 大分医科大学, 医学部, 助手 (00239485)
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キーワード | Helicobacter pylori / 日本猿 / 持続感染モデル / 萎縮性変化 / 壁細胞 / 増殖帯 / 胃癌 |
研究概要 |
すでに、我々が確立したHelicobacter pylori(HP)の持続感染モデルを用いて3年間の経過を観察し、HP陰性群と比較して感染後1.5年後から胃粘膜の萎縮性変化が有意に進展することを報告した。今回はHPの持続感染と胃癌との関連性を検討する目的でHP陽性群における胃酸分泌能を生検組織を用いた胃体部の壁細胞の動態および内視鏡を用いたコンゴ-レッドテストで酸分泌領域の変化を検討した。さらに、Ki-67を用いた免疫組織化学的検討によって胃粘膜上皮細胞の増殖帯の範囲を計測しコントロール群と比較した。生検標本のHE染色像から壁細胞の数を算定しコントロール群と比較すると、HP感染群において感染2年後から有意に壁細胞の数が減少した。感染成立後3年を経過した時点から、胃粘膜の酸分泌領域は胃角部小弯側から口側へ向かって減少し(コンゴ-レッド不染帯の拡大)、ヒトと極めて類似したパターンを示した。さらに、胃粘膜上皮におけるKi-67陽性細胞の増殖期の細胞の動態を観察するためにKi-67陽性細胞の最上部から最下部までの長さを増殖帯(B)とし、胃粘膜全体の厚さ(A)に対する比率(proliferative zone index;B/A)を経時的に求めた。Proliferative zone indexはHP感染後3.5年後からコントロール群と比べて有意に増加し始めている。 これらの感染実験の結果から、HPの持続感染により1.5年後から組織学的に萎縮性変化がみられ、2年後には壁細胞数の減少が始まり、3年後には萎縮移行帯の口側への上昇がみとめられた。このような変化を起こした背景の胃粘膜ではHP感染後約3.5年から胃粘膜上皮細胞の増殖帯の拡大がみとめられた。これらの一連の変化を感染時期の明かな動物モデルを用いて検討することは、HPの持続感染と胃癌発症との関連性を研究する上で極めて重要である。
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