研究概要 |
潰瘍性大腸炎標的抗原40KD蛋白は、ヒト大腸粘膜より既報の精製法に従い単離精製された。その40KD蛋白のアミノ酸組成が一部明らかにされ、細胞骨格形成蛋白であるトロポミオシンとの相同性が認められた。そこで精製トロポミオシンを固相化抗原としたELISAを新たに作製し、潰瘍性大腸炎(UC)患者血清中の抗トロポミオシン抗体価を測定した。その結果、対照に比較しUC患者で有意に高値を示すこと、またUCの活動性に一致して抗体価が変動することを確認した。さらに、このUC患者血清中に存在する抗トロポミオシン抗体が本疾患の患者大腸粘膜障害機序として想定されているADCC機構に関与する抗体であるか否かを検討するため、培養大腸癌細胞RPMI4788を標的細胞としたinhibition-ADCCアッセイを行なった。すなわち、高いADCC活性を示すUC患者血清を、トロポミオシンで吸収後、ADCC活性の変化を検討したところ、ADCC活性の有意な低下を認めた。(第80回消化器病学会リサーチフォーラム)以上から潰瘍性大腸炎患者血清中にはADCC機序に関与する抗トロポミオシン抗体が、特にUC活動期に有意に高く存在することが明らかとなった。現在は、トロポミオシン蛋白上の抗原の認識機構解明のため、ヒトMHC-classII蛋白(DP,DQ,DR)遺伝子をそれぞれトランスフェクションしたL-cellを用いて、トロポミオシンのペプチドとの結合性をin vitroで検討を行なっている。又、ヒト大腸粘膜のcDNAライブラリーをcos細胞へトランスフェクションし、抗40KD蛋白抗体および抗トロポミオシン抗体を用いたpositive selection法で大腸粘膜のトロポミオシン遺伝子クローニングを行なっている。
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