研究概要 |
手術により摘出した肝細胞癌組織および周辺部の非癌部組織各100mgを0.5%Triton X-100及びDNare,RNaseを用いたBufferによりdetergent処理し、不溶性分画内に存在するIFを使用した。 この分画を、組織100mg当り500μlの0.5%Triton X-100,8Mウレア,2%、β-メルカプトエタノールを含んだ溶液で溶解し、サンプルとした。このサンプルを2次元電気泳動した。癌部と非癌部の蛋白の比較を行った。 ウエスタンブロッテイングによる検討:サイトケラチンの同定に用いた抗サイトケラチン抗体はMoll分類でNo8.18,19に特異的に反応するものである。いずれの組織においてもこれらの蛋白は検出されたが、No18に対応するスポットはNo8のそれに比べbroadであった。この現象は癌部、非癌部に共通していた。癌部において,3種のサイトケラチン間の染色性やスポットの大きさの比が非癌部と異なる症例がみられ、NO19に対応するスポットが塩基側にやや大きくみられる例や、No18に対応するスポットが大きくみられる症例があり、一定の傾向はみられなかった。また、非癌部に検出されない高分子量のサイトケラチンや低分子量のサイトケラチンが癌部に存在する例もあった。 以上の成績から、従来我々が報告している,肝細胞の癌化に伴う、1Fの免疫染色性の低下という現象は,癌化に伴うサイトケラチンの状原決定基の変化はphenotyprc changeというよりも、むしろ細胞個々の1Fの代謝過程や1F関連蛋白の発現の変化を意味するものと言える。 今後は発症追随におけるサイトケラチンのmRNAレベルの変化を分子生物理学的に明らかにする必要がある。
|