研究概要 |
UDCAは、ヒトリンパ球の免疫グロブリン(Ig)産生、サイトカイン(IL-2,IL-4,rIFN)産生に対して抑制的に作用し、IL-2に誘導されるNK活性、LAK活性に対しても抑制的に作用することを、これまでに明らかにしてきた。さらに、平成5年度には、モノクロナールな細胞群を用いて、UDCAの抗原提示における影響についても検討し、抗原特異的なT細胞の活性化現象がUDCAにより抑制されることを確認した。すなわち、ヘルパーT細胞(Th)としてovalubmin(OVA)特異的マウスハイブリドーマ細胞を、抗原にはTNP化したOVA(TNP-OVA)を、抗原提示(APC)としてはハプテンTNPに特異的なIgM(IgM_<TNP>)を表出するマウスBリンパ腫を使用し、抗原提示に及ぼすUDCAの影響を活性化Thの示すIL-2産生およびThのcytotoxicityを指標に検討したところ、UDCAはこれら両活性をともに用量依存性に抑制した。 本年度は、Thの認識するantigenic determinantである16アミノ酸の既知配列を人工的に作成し、UDCAによるTh活性化現象の抑制がAPCの抗原のuptake、degradationの抑制によるものか、あるいはTh細胞への直接的作用かを検討したところ、APCによるuptakeおよびdegradationを必要としないこの人工ペプチドを使用しても、UDCAのThの活性化現象の抑制は回避されなかった。したがって、UDCAによるThの活性化現象の抑制は、ThがAPC上の抗原を認識する過程あるいはその後のT細胞の細胞内情報伝達過程に作用して得られていると推測された。 さらに、マウスにUDCA(1-5mg/日、3日間)を経口投与し、肝内単核球、脾細胞、末梢血単核球のIg産生を検討したところ、UDCAのIg産生抑制は肝内単核球においてのみ観察されたことから、UDCAの免疫調節作用は肝を主座として発揮されると考えられた。 UDCAは、PBC治療に使用され有用であることは知られているが、本研究の結果より、その作用機序のひとつとしてUDCAによる肝におけるimmunomodulationも推察された。
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