研究課題/領域番号 |
05670493
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
栗山 茂樹 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (50244710)
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研究分担者 |
吉川 正英 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (50230701)
辻井 正 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30075064)
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キーワード | 肝細胞癌 / 遺伝子治療 / レトロウイルスベクター / 遺伝子導入 / アルブミン遺伝子 / プロモーター / βガラクトシダーゼ |
研究概要 |
in vivo遺伝子導入法を用いた肝癌に対する遺伝子治療を確立するための基礎実験として、肝癌細胞特異的に外来遺伝子の発現を誘導し得るかを検討した。マウス由来アルブミン遺伝子のエンハンサーおよびプロモーターの制御下に、大腸菌のβ-galactosidase遺伝子であるlacZ遺伝子を発現するAlb e/p-pIP200レトロウイルスベクターを作製し、in vitroおよびin vivoにおける肝癌細胞特異的な遺伝子発現に関する検討を行い以下の結果を得た。1)Alb e/p-pIP200レトロウイルスを肝癌細胞に感染させるとlacZ遺伝子の発現を認めたが、線維芽細胞およびBリンパ腫細胞に感染させてもlacZ遺伝子の発現を認めなかった。2)マウス皮下肝癌内へ直接Alb e/p-pIP200レトロウイルスを注入すると、肝癌細胞においてlacZ遺伝子の発現を認めたが、周囲の結合組織には認めなかった。3)マウス肝内へ経脾臓的にあるいは直接Alb e/p-pIP200レトロウイルスを注入しても、正常肝細胞においてlacZ遺伝子の発現を認めなかった。4)部分肝切除術を施行したマウス肝内へ、経脾臓的にあるいは直接Alb e/p-pIP200レトロウイルスを注入すると、少数の肝細胞においてlacZ遺伝子の発現を認めたが、遺伝子導入効率は皮下肝癌における場合と比較すると極めて低かった。また、骨髄細胞を含む他の臓器にはlacZ遺伝子の発現を認めなかった。5)肝癌細胞にAlb e/p-pIP200レトロウイルスを反復感染させると、遺伝子導入効率は著明に上昇した。以上より、アルブミン遺伝子のエンハンサー及びプロモーターを内因性の制御因子とする組換えレトロウイルスを用いれば、再生肝細胞や骨髄細胞などの増殖期にある正常細胞に影響することなく、肝癌細胞特異的な外来遺伝子の導入発現が可能であることが示唆された。さらに、in vivoにおいても、組換えレトロウイルスの反復投与を行えば、外来遺伝子の導入効率を上昇させ得ると考えられた。
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