研究概要 |
平成5年度の研究で以下の知見を得、内科、消化器病あるいは生理学関連雑誌にその成績を発表、一部は投稿中および投稿準備中である。 1.活性酸素の細胞傷害機序:活性酸素の細胞傷害は過酸化水素(H202)がmediatorであり(Am.J.Phy-siol.1987;253:G40-G48)、H202は細胞内グルタチオン酸化還元系で消去れるが(Am J Physiol 1991;261:G921-G928)、細胞内GSH系で消去しきれない過量のH202は胃粘膜細胞傷害を惹起し、この傷害は細胞内Fe(III)からFe(II)への転換により仲介される(Gastroenterlogy 1993:104:780、Gastronte-ro; Jpn 1993:28:132-138)。これは胃粘膜細胞のみならず、血管内皮細胞に対する活性酸素の傷害性にも共通した機序である(J.Cell Physiol(印刷中))・ 2.細胞内SODの抗酸化防御因子としての役割:銅イオンのキレート剤であるdiethyldithiocarbamateは選択的に細胞内Cu,Zn-SODを阻害しH202傷害の増悪をきたす(J Clin lnvest 1994;93:331-338)。従って、細胞内Fe(III)のFe(II)への還元(Gastroenterology 1993:104:780)に細胞内スーパーオキシド(02-)の産生が関与するが、これは細胞内02-の産生源のひとつと考えられているxanthine oxidase系とは独立した過程である(J Clin lnvest 1994;93:331-338)。 3.細胞外GSHの保護作用および細胞内取り込み機序:細胞外に負荷したGSHは活性酸素に対し保護作用を有し、これはgamma-glutamyl transpeptidaseによるGSHの水解、cysteingとしての取り込み、細胞内でのGSHへの再合成に基づく(Gastroenterology(印刷中))。 4.細胞傷害に果たす過酸化脂質の役割:有機パーオキシドであるtert-butyl hydroperoxideを負荷した場合、用量依存性に細胞の過酸化脂質の産生が促進されるが、脂質過酸化は細胞傷害に先行する。鉄イオンのキレート剤が細胞傷害のみならず脂質過酸化を抑制することにより、脂質過酸化は細胞傷害の一因と判断される(1994年米国消化器病学会発表およびGastroenterolgy(投稿中))。 5.エタノール(EtOH)の胃粘膜細胞傷害にはたす活性酸素の役割および細胞内GHS酸化還元系のEtOHに対する保護作用を示した(日本消化器病学会雑誌 1993;90:1866、投稿準備中)。
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