肝癌の発癌と肝細胞増殖因子(HGF)のレセプター遺伝子であるc-metについて関連を明かにする目的で、c-met遺伝子の発現の状態、c-met遺伝子の増幅の有無、再編成によるc-metのactivation(Tpr-met)の検出そしてHGFレセプター発現の状態について検討を行った。 ラットに、四塩化炭素投与により肝硬変を作製し、diethylnitrosamine(DEN)投与により前肝癌病変を、3′-Me-DAB投与により肝癌を誘発した。c-met遺伝子の発現は、ラット肝よりpoly(A)+RNAを抽出し、Northern blot法にて解析した。tpr-metの検出は、RNAよりtpy-met breakpointを含む205bpについてRT-PCRにてcDNAを増幅し、internal probeを用いてSouthern blot法でtpy-metの検出を行った。c-met遺伝子の増幅の解析は、抽出したDNAを制限酵素にて切断し、c-metcDNAを^<32>Pで標識してprobeとし、Southem blot法にて解析した。HGFレセプターの検出は、肝組織の凍結切片を蛍光抗体法にて観察した。 c-met遺伝子の発現は、肝硬変では正常に比較して軽度増加し、前肝癌病変、肝癌病変では1.5-2倍に増加していた。c-met遺伝子の増幅は、肝硬変と前肝癌病変では認められなかったが、肝癌病変では2/3のラットにおいて2-7倍の増幅が認められた。tpr-metは各病変とも認められなかった。HGFレセプターは、肝硬変と前肝癌病変では発現の増加は見られなかったが、肝癌では一部の組織において発現の増加が見られた。 以上の成績より、3′-Me-DAB誘発肝癌の発癌機構にc-met遺伝子の増幅が関与している可能性が示唆され、今後、HGFレセプターのチロシンリン酸化状態の検討が必要と考えられた。
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