1。疫学的検討 特発性間質性肺炎(IIP)に肺癌が高率に合併することが指摘されているが、肺癌合併症例はほとんどが男性で、喫煙者であることが当研究者その他から既に報告されている。そのため、IIPが喫煙から独立した肺癌発生危険因子であるかどうかを明らかにすることは重要である。それを調べるために、喫煙指数をマッチさせた2群を設定した。すなわち、同時期に当科に入院した慢性閉塞性肺疾患患者(COPD)群(対照群)およびIIP患者群である。これら2群について肺癌の発症率を比較検討した。 その結果、IIPで肺癌発症率が有意に高いことが確かめられた。このことから、IIPそのものが喫煙から独立した肺癌発症の危険因子であると結論された。ただし、COPD129例中95例(74%)の予後を追跡調査できたが、他の症例については未検討であり、継続課題として残された。 2。分子生物学的検討 IIPは慢性に経過する症例が多いが、これには血小板由来成長因子(PDGF)やEGFが関与していることが知られ、一方、この増殖因子と癌遺伝子(c-fos、c-myc)が関与していることも知られている。そこで、IIP・肺癌合併症例とIIPのない原発性肺癌症例について、EGFおよびその受容体であるEGF-Rを免疫組織学的に比較検討した。 その結果、腫瘍細胞における両者の発現率に差はみられなかった。しかし、IIP・肺癌合併例の腫瘍周囲の間質にEGFが有意に多く発現していることが知られ、paracrine mechanismの存在が推測された。さらに症例を増やして検討することが必要と思われた。
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