研究概要 |
疫学的研究 IIPと診断された66例を1年から13年間経過観察した。その結果、IIPと診断された66例の患者から経過中11名(16。7%)に肺癌がみられ、その内10名が男性喫煙者であった。組織型では腺癌6例と多く、部位では末梢が多かった。またIIPの診断から肺癌の診断までの期間は平均で4.82年であった。肺癌合併IIPと非合併IIPの比較では、ステロイド未使用で、粉塵吸入歴を持ち、胸部写真上肺の縮みが少ないもの、つまりIIPの非定型例の要素を持つものに肺癌の合併が多かった。喫煙因子を除外するため、喫煙指数・性別をマッチした慢性閉塞性肺疾患患者を対照群(COPD群)として肺癌合併率を比較した。年齢・観察期間がCOPD群で高値であるのにも関わらず、肺癌の発生率ではIIP群で、66例の患者から経過中11名(16.7%)に肺癌がみられ、COPD群での95名中1名(1%)の肺癌合併率よりも有意に高かった。以上より、IIPそのものが喫煙から独立した肺癌の危険因子であることが唆さた。 免疫組織化学的検討 IIP合併肺癌で増殖機能が亢進している可能性が示唆されている。そこで線維化に関与すると考えられているEGF,EGF-Receptorの発現をIIP合併肺癌とそれ以外の肺癌の組織で免疫組織化学的に検討した。また、IIPの増殖因子とされるPDGFやEGFがc-myc.c-fosを活性化することが知られている。そこで、IIP合併肺癌におけるc-myc,c-fos癌遺伝子蛋白の発現も免疫組織化学的に検討した。その結果、1)EGFやEGF-Rは腫瘍細胞では両群間で有意差がなかったが、間質細胞ではIIP合併肺癌群でEGFの陽性率が有意に高く、IIP合併肺癌でその増殖にパラクライン機構が関係する可能性が示唆された。2)IIP合併肺癌およびIIP非合併肺癌群で癌遺伝子の発現に差はなかった。
|