研究概要 |
1.慢性気管支炎と気管支喘息患者および正常群からの気管支生検組織における、TNFα、TGFβ1およびPDGF-BのmRNAと蛋白の発現を、それぞれin situ hybridizationまたはimmunohistochemistryを用いて検討した。 (1)これらのmRNAは、慢性気管支炎においては気管支上皮細胞や線維芽細胞、マクロファージにより、喘息では、主に好酸球により発現されていた。一方、正常群では、間質系の細胞にTGFβ1mRNAの局在は認められたものの、PDGF-BおよびTNFαmRNAは殆ど認められなかった。 (2)mRNA発現細胞数を、三群間で半定量的に比較した。喘息群では、PDGF-Bにおいてのみ正常群より有意に多くの発現細胞を認めたが、慢性気管支炎群では、TGFβ1およびTNFαの発現はいずれの群よりも有意に強く、PDGF-Bにおいては喘息群と同程度に強い発現を認めた。即ち、慢性気管支炎および気管支喘息では、ともに慢性気道炎症が特徴とされているが、増殖因子の発現様式は異なることが明らかとなった。 (3)PDGF-BおよびTNFαの蛋白は、慢性気管支炎と気管支喘息においては、気管支上皮細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞やマクロファージに局在していたが、正常組織には認められなかった。 2.気管支喘息および慢性気管支炎の患者から得られた喀痰中の細胞に、GM-CSF,IL-5およびIL-8の蛋白を、immunocytochemistryにより検出することができた。 さらに、前者ではGM-CSFおよびIL-5陽性細胞の、後者ではIL-8陽性細胞の比率が有意に高かった。即ち、それぞれの病態発症に関与すると考えられているサイトカインが喀痰中の細胞にも検出可能であることから、喀痰も慢性炎症性気道疾患の病態解明のための有用な検体になりうることが明らかとなった。
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