研究概要 |
癌細胞では,正常細胞と異なる発現をしている種々の遺伝子が存在すると考えられている。我々は,癌細胞において特異的に発現増強していると思われる約6kbのmRNAの3'末端150塩基のcDNAをクローニングしたため、これをプローブとして,cDNAライブラリーを再スクリーニングし,陽性クローンを数個得た。このクローンについて塩基配列を検討したが、cDNAの3'末端800bpとgenomic DNA 3.5kbを含んでいた。mRNAの全長をクローニングして全塩基配列を決定することはできなかったが、得られた塩基配列には,データベースと有意なホモロジーはなかった。このcDNA断片をプローブとして種々の癌細胞株および肺癌組織についてサザンブロッティングおよびノザンブロッティングを行なった。この遺伝子は、サザンブロッティングにより癌細胞においてDNAの増幅や再編成は認められなかったが、上皮系の癌細胞で発現増強が認められた。また、同一症例の肺癌組織でも、転移巣によって発現量が異なっており、p53遺伝子の変異、1番染色体短腕の欠失、テロメア長の延長を認めた転移巣での発現増強が認められた。この遺伝子の発現増強は、c-mycやRb遺伝子の発現量とは関係なく、PHA刺激したリンパ球やB cell lineでは低レベルな発現量しかなく、単に細胞増殖に関わる遺伝子ではないことが示唆された。さらに5'側のシークエンス解析および発現レベルの解析,アミノ酸配列の推定を引き続き検討中である。
|