研究概要 |
実施計画の方法に従い、肺胞蛋白症患者2名、肺線維症2名、塵肺症3名、肺サルコイドシース症2名の各疾患患者と、その対照として健常者2名について気管支肺胞洗浄を施行して肺胞マクロファージを得て、免疫組織化学および免疫電顕的にスカベンジヤー受容体の発現について検討した。 1.免疫組織化学的検討:I型、II型の各々に特異的な抗ヒトスカベンジヤー受容体抗体hSRI-3,II-1を用いた免疫2重染色では、これらの抗体が同一の肺胞マクロファージに発現していることが確認された。また、これら2型に共通な抗体hSRI-2を用いて各種肺疾患について検討すると、肺線維症や塵肺症、肺サルコイドーシス症では健常対照群と有意の差は認められず、肺胞マクロファージの約90%でhSRI-2に陽性であったが、肺胞蛋白症では肺胞マクロファージの約70%に陽性像が認められたのみで、肺胞蛋白症でスカベンジャー受容体の発現が低下している可能性が示唆された。 2.免疫電顕的検討:方法にしたがい、hRSI-3を用いた免疫電顕を施行すると、スカベンジャー受容体が肺胞マクロファージの細胞膜表面に発現しており、一部エンドゾームにも陽性像が認められ、receptor-mediated endocytosisによる異物処理過程に関与していることが確認された。各種肺疾患についての検討では、肺胞蛋白症で、ミエリン構造をとる脂質の細胞内蓄積とともに、細胞膜におけるスカベンジヤー受容体陽性像の低下が観察された。 今回の研究により、スカベンジャー受容体が異物処理過程において重要な役割を演じていること、肺胞蛋白症の発症原因としてこの受容体の発現の低下が関与していることが示唆された。今後、スカベンジャー受容体の肺感染症に対する関与について、LPSの処理や肺サーファクタント存在下での細菌の取込み、殺菌ということに関しても研究を発展させる予定である。
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