研究概要 |
我々はすでに、血清サーファクタント蛋白質A(SP-A)が間質性肺炎で有意に高値を呈し、新しい肺特異的な血清マーカーとして間質性肺炎の診断に有用であることを報告したが(Am Rev Respir Dis,1993),今年度は、新たに以下の知見を得た. 1)多数症例の集積により、血清SP-Aが特発性間質性肺炎(Respiration,in press),肺胞蛋白症(Eur Respir Dis,in press)の診断および病勢判定において有用であることを報告した. 2)血清SP-Aは膠原病性間質性肺炎でも高値を呈し,膠原病における間質性肺炎の血清診断法として有用であることを示した(submitted)。 3)SP-Dの単クローン抗体を用いたsandwich ELISA法により,SP-Dについても血中での定量を行なった.その結果,SP-Dは血中ではSP-Aより3倍以上の高値を示し間質性肺炎での陽性率も高いことから,血清SP-Dの診断的意義は血清SP-Aよりも高い可能性を示した(Submitted). 4)SP-A,SP-Dの単クローン抗体を用い、間質性肺炎の免疫組織学的検討を行なった結果,血清SP-A,SP-D上昇の機序につき肺胞II型上皮細胞の肥大,増生の関与が示唆された(未発表). 5)放射線肺炎症例で血清SP-A,SP-D値が高値を示すことを明らかにしているので(未発表)、放射線によるラット障害肺を作成して血清SP-A,SP-D上昇の機序について検討中である. 本研究により、間質性肺炎の診断や治療効果、予後の判定などが可能となり、さらには肺の繊維化における肺胞II型上皮細胞の役割が明らかにされていくことが期待される.
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