本研究の目的は、酸素障害(oxidant stress)によるとされている障害の発生に、実際に活性酸素が関与していることを証明することである。本研究では、ケミルミネッセンス法により摘出潅流肺におけるスーパーオキサイドのex vivoでの検出を試みた。なお、酸素障害モデルとして高濃度酸素暴露動物を用いる計画であったが、技術的な問題等から、ARDS(adult respiratory distress syndrome)モデルとして一般によく用いられるリポポリサッカライド(LPS)投与による肺障害モデルについて主に検討した。 ARDSモデル:LPS投与後経時的にラットから肺を摘出し、スーパーオキサイドを測定した。その結果、スーパーオキサイド産生、およびphorbor ester(PMA)刺激によるスーパーオキサイド産生能の著しい増加を捉らえることができ、肺障害に先立って活性酸素が過剰に生成されることを証明した。また、opsonized zymosanを刺激剤として用い、スーパーオキサイドの細胞内での生成と細胞外への放出を同時に観察できる可能性が示唆された。スーパーオキサイドの産生細胞は、サイクロフォスファマイド投与により好中球depletionモデルを作成して検討した結果、主に好中球によるものと考えられた。 高濃度酸素暴露による障害モデル:無刺激でのカウントが有意に高く、スーパーオキサイドが無刺激で産生され続けていることが示唆された。しかし、これはその後に添加したSODにより阻害されなかったことより、スーパーオキサイドはSODの到達しない間質や肺胞付近で発生しているものと考えられる。末梢血の多核白血球あるいは肺胞マクロファージを単離し、スーパーオキサイド産性能を測定したが、増加は認められず、炎症細胞の関与の可能性は少ないものと考えられた。スーパーオキサイド産生系については検討中である。
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