本研究の目的は酸素障害(oxidant stress)によるとされている障害の発生に、実際に活性酸素が関与していることを証明することである。本研究ではケミルミネッセンス法により摘出潅流肺におけるスーパーオキサイド(O^-_2)のex vivoでの検出を試みた。なお、酸素障害モデルとして高濃度酸素曝露動物を用いる計画であったが、技術的な問題等から、ARDS(adult respiratory distress syndrome)モデルとして一般によく用いられるリポポリサッカライド(LPS)投与による肺障害モデルについて主に検討した。 1)ARDSモデル:LPS投与後経時的にラットから肺を摘出し、O^-_2を測定した。その結果、O^-_2産生およびPMA刺激によるO^-_2産生能の著しい増加を捉らえることができ、肺障害に先立って活性酸素が過剰に生成されることを証明した。また、opsonized zymosanを用いて刺激すると、O^-_2の細胞内での生成と細胞外への放出を同時に観察できる可能性が示唆された。O^-_2の産生細胞は、サイクロフォスファマイド投与により多挾球depletionモデルを作成して検討した結果、主に好中球によるものと考えられた。 2)高濃度酸素曝露による障害モデル:高濃度(80%O_2)酸素下で一週間飼育したラットから摘出した肺について検討したところ、、無刺激でのphotonカウントがコントロールに比して有意に高く、O^-_2が無刺激で産生され続けていることが示唆された。しかし、この上昇はその後に添加したSODにより阻害されなかったことより、O^-_2はSODの到達しない間質や肺胞付近で発生しているものと考えられる。末梢血の好中球あるいは肺胞マクロファージを単離し、O^-_2産生能を測定したが、増加は認められず、炎症細胞の関与の可能性は少ないものと考えられた。O^-_2産生系について現在検討中である。
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